2月20日付で出された証券取引等監視委員会(SESC)による行政処分勧告に基づき、ラッキーバンクは3月2日付で金融庁より業務改善命令を下されました。

SESCによる事実関係の説明に登場するX社。このX社について独自に調査をした結果、X社は不動産の流動化と開発を事業の柱とするウイングトラスト株式会社であることが有力との結論に至りました。

■証券取引等監視委員会のウェブサイトより転載
「貸付先のほとんどは、田中 翔平 代表取締役(以下「田中社長」という。)の親族が経営する不動産事業を営むX株式会社(以下「X社」という。)となっており、田中社長を含む取締役全員がX社における不動産事業の会議に参加し各事業の進捗状況等の報告を受けているほか、平成28年4月から同29年2月までの間においては、内部管理責任者である取締役をX社の不動産事業部に兼務させるなど、当社とX社は密接な関係の中業務を行っている(平成29年8月末現在、償還期限が到来していないファンドは、185本、出資金約62億円)。」

行政処分-問題点の整理

貸付先がX社に偏っていたこと。そしてそのX社の事業において、借入金の返済が困難な状況にあったこと。これらがラッキーバンク対する行政処分の主な背景となっています。そしてこの事実関係から投資家がもっとも危惧するポイントは運用中のファンドは健全なのか? あるいは無事に償還を迎えることができるのか?

この不安要素をクリアにするために、X社がどのような企業であるのか特定する必要があるとの判断をし、当サイトでは独自にリサーチをしてみることにしました。

ラッキーバンク・インベストメントはどんな会社なのか

ラッキーバンクというと都心一等地の不動産を担保にした高利回りファンドをラインナップするソーシャルレンディング事業者。その経営者は若き起業家・田中翔平社長。ファンドは募集開始後に即完売 – だいたいこのようなイメージにまとめられると思います。

しかし表面に出ている情報だけではX社にたどり着けそうもありませんので、会社の基本情報を把握するために履歴事項全部証明書を確認してみることにしました。
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法務局で取得した履歴事項全部証明書に記載された情報を一通り確認したところ、特に目新しい情報はありません。ただし一つだけ気になる項目があります。それは代表者の住所。

東京都中央区●●●箱崎町●番●号ウイング箱崎ビル とあります。

ここに記される住所は代表者の住民票に記載されている現住所です。しかし、中央区も最近はタワーマンションが増えたとはいえ、箱崎は少し生活感がなさそう。真っ先に思い出すのは首都高の巨大ジャンクション。何かパリッとしたスーツをおしゃれに着こなす田中社長が、首都高ジャンクション近くの「ビル」から出社するところが想像できない…。

というわけで、検索してみます。

やはり生活感のない、古めのオフィスビルといった感じ。東証一部上場の大企業の代表者でも、生活実態のない住所を登記することは普通にある話。実際の住まいを公開しても、ほとんどメリットはないですからね。今回の調査目的はX社を特定すること。何かヒントが出てこないものか、もう少し調べてみます。住まいを見つけることが目的ではないです、念のため。

次に考えたのは、このビルを本店登記している企業はないのか? もしかしたらラッキーバンクと繋がりのありそうな企業が入居しているのではないか? ということ。

こういう時は国税庁の法人番号検索サイトが便利。日頃しっかり納税していますから、遠慮なく利用させてもらいましょう。
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検索でヒットした5つの企業についてネット検索してみましたが、特に関係するような情報は得られませんでした。ただ、ウイングキャピタル有限会社は気になりますね。ビル名にも「ウイング」が入っているので、もしかしたらビルの所有者かもしれません。もう少しウイング箱崎ビルにこだわって調べてみることにしました。

ウイング箱崎ビル

今度は土地と建物の全部事項証明書を取得してチェック。

平成19年にウイングキャピタル有限会社から田中伊世子さんという方へ売買により所有権が移転しています。さらにこの方の住所はウイング箱崎ビルと同じ住所で登記されています。そして平成23年には田中さんからバリュー開発株式会社へと売買により所有権が移転しています。

これまでにわかった事実を整理してみます。

・田中翔平社長の住所はウイング箱崎ビル
・田中伊世子氏がウイング箱崎ビルを所有していた期間がある
・田中伊世子氏の住所もウイング箱崎ビル
・翔平氏と伊世子氏は同姓で同住所
・現在のウイング箱崎ビルはバリュー開発が所有権を持っている

その他の事項を確認してみると、平成27年に登記された根抵当権設定が気になりました。

債務者:バリュー開発(株)、ウイングトラスト(株)
根抵当権者:ラッキーバンク・インベストメント(株)

ラッキーバンクがウイング箱崎ビルを担保に、バリュー開発とウイングトラストへお金を貸し付けている構図です。

新しいキーワードとしてウイングトラストとバリュー開発という名称が出てきました。この2社について掘り下げてみます。

ウイングトラストとバリュー開発


ウイングトラストは不動産の流動化や開発が事業の柱。不動産OWNER’S倶楽部というラブホテルの所有権を共有する投資商品を販売していたこともあるようです。このタイプのファンドは、数年前に流行したことがありましたね。

そして代表者のお名前は田中伊世子氏。代表者の登記住所はやはりウイング箱崎ビルと一致しました。

もう一方のバリュー開発について。こちらはネット検索ではまともな情報が出てきませんので、履歴事項全部証明書を取得して情報を確認してみます。

事業目的には不動産賃貸業や不動産の売買・仲介が筆頭に挙げられています。代表者は田中さと氏。またもや田中姓です。そして代表者の登記住所はウイング箱崎ビル。



新たに判明した情報を整理します。

・バリュー開発とウイングトラストを債務者として、ラッキーバンク・インベストメントとの間に金銭消費貸借取引が行われている
・田中伊世子氏はウイングトラストの代表者
・バリュー開発の代表者は田中さと氏
・伊世子氏、さと氏、翔平氏の3名は同姓かつ同じ住所の住民票がある

X社の実態は?

バリュー開発は表立った営業をしていないようなので、X社の候補から除外しても良さそうです。そうなると残るはウイングトラスト。

今一度X社の定義をおさらいすると「貸付先のほとんどは、田中 翔平 代表取締役(以下「田中社長」という。)の親族が経営する不動産事業を営むX株式会社」ということになります。

生活実態があるのかどうかは不明ですが、同姓の3名の登記住所が一致するということは一般的に家族あるいは親族とみなすのに十分な情報でしょう。そしてこの3名が代表者となっている3社の間では金銭消費貸借取引が行われている。ウイングトラスト(とバリュー開発)はラッキーバンクの融資先であるということについても、ウイング箱崎ビルの根抵当権設定によりその根拠が得られています。

まとめ

ラッキーバンクからX社の具体名が明かされているわけではないので100%の断定はできません。しかし「貸付先」、「親族」、「不動産事業」という3つのキーワードについて、確度の高い裏付けはできたと思います。ウイングトラストのウェブサイトに掲載されている物件情報と、ラッキーバンクのファンド情報を照合してみることで新たな事実が見えてくるかもしれません。

投資家視点でもっとも関心の高いポイントはX社の経営状態です。健全な経営ができているかどうかが、今後のファンド運用や償還に直結してきます。この点についても機会があればリサーチしてみたいと思います。